障害はアイデアの種!リノベーションの現場で見つけた、建築士としての私の役割
今回は、先日工事が完了した築45年・木造2階建て住宅のリノベーションについてお話ししたいと思います。
この計画は賃貸住宅としてのリノベーションでしたが、工事を進める中で、新築とはまったく違う難しさと面白さを改めて感じました。そして何より、「建築士として自分が現場にいる意味」を考える機会にもなりました。
リノベーションの制約は「アイデアの種」
新築の注文住宅は、ゼロから自由に計画できます。一方、リノベーションには、すでに建っている建物という大きな制約があります。間取りも構造も、すべてを自由に変えられるわけではありません。でも私は、その制約こそがリノベーションの面白さだと思っています。
目の前に課題があるからこそ、「どうすればもっと良くできるだろう。」そんなふうに考える時間が、新しいアイデアを生み出してくれます。
私にとって障害は、決してマイナスではありません。次の工夫につながる「アイデアの種」なのです。現場でしか分からないことがあります。リノベーションでは、壁や床を解体して初めて分かることがたくさんあります。
今回も、まさに「開けてびっくり」の連続でした。屋根では小さな雨漏りの跡が見つかり、床下では土台に「ヒバ」の木が使われていることが分かりました。ヒバは、昔からシロアリに強い木材として知られています。そのおかげで、築45年という年月を経ても、大きな被害を受けずに建物が守られていました。
こうした建物の状態を読み取り、何を残し、どこを補強するべきかを判断すること。それは、現場で経験を積んできた建築士だからこそできる仕事だと感じています。

見えない部分こそ、暮らしを支える
今回のリノベーションでは、見た目を新しくするだけではなく、安心して長く暮らせる住まいにするために、
- 耐震補強
- 断熱補強
- 給排水配管の交換
- 電気配線の更新
なども行いました。
住まいは、壁紙や床材だけできれいになるわけではありません。私は以前から、「配線は家の血管」のようなものだと考えています。建物の骨組みや設備といった、普段は見えない部分まで丁寧に整えることが、本当に価値のあるリノベーションにつながると思っています。
「住む人」が見えた瞬間
今回の工事では、途中で入居される方が決まりました。それまでは、自分自身がお施主さんになったつもりで、「こうしたら良いだろう」と考えながら設計を進めていました。ところが、「ここに住む人」が具体的に見えた瞬間、自分の考え方が大きく変わりました。
「この人なら、ここでどんな暮らしをするだろう。」
そんなことを考え始めると、一つひとつの判断が変わっていきました。
自分では、
「住む人が見えると、弱いんです。」
そう思います。
でも、その”弱さ”こそが、家づくりには必要なのかもしれません。賃貸住宅として始まったこのリノベーションも、気が付けば注文住宅のような気持ちで向き合っていました。ただ「きれいな部屋」をつくるのではなく、その人が心地よく暮らせる住まいをつくりたい。そんな想いが、この住まいに少しずつ命を吹き込んでくれたように感じています。

建築士の仕事とは
注文住宅でも、リノベーションでも、大切なのは「住む人の顔が見える家づくり」だと思っています。制約があるから諦めるのではなく、その制約を活かす方法を考える。現場で起きる問題を一つひとつ解決しながら、その人にとって一番良い住まいをつくっていく。それが、私が考える建築士の役割です。
これからも、知識や経験だけでなく、「この家で暮らす人」を思い浮かべながら、一棟一棟、丁寧に住まいづくりに向き合っていきたいと思います。