78歳の方が建てた4回目の家づくり〜振り返りをお施主様とともに
今年の春、私が設計を手がけた当時78歳のN様のお住まいが完成しました。
そして先日、住み始めて初めて迎えた夏の暮らしぶりをお伺いするため、ご自宅を訪問してきました。
家づくりを振り返りながら、実際に暮らしてみて感じたことや、その時々の想いをお聞きすることができましたので、今回はその様子をご紹介したいと思います。
玄関を開けると、N様は笑顔で迎えてくださいました。
「ようこそ。ちょっとこのリモコンがうまく使えないんだけど。」
「実はね、明日が誕生日なの。」
そんな何気ない会話から始まった久しぶりの再会。以前と変わらない朗らかな笑顔に、私も自然と嬉しい気持ちになりました。
室内へ入ると、午後のやわらかな光がリビングいっぱいに広がり、その光が和室に美しい陰影をつくり出していました。
完成した時にも感じていた空間の心地よさでしたが、家具が入り、暮らしが始まった住まいには、また違った温もりがあります。
その景色を眺めながら、「無事にここまでたどり着けた」という安堵にも似た気持ちが込み上げてきました。
建て替えではなく、「想いを受け継ぐ家づくり」
N様のお住まいは建て替えでした。
以前のお住まいで感じていた不便さを解消することはもちろん、お花を育てることが趣味だったN様の暮らしを大切にしたいという想いがありました。
梅の木やバラを新しい庭へ移植し、区画整理との調整も進めながら、単に新しい家を建てるのではなく、「受け継ぐもの」と「新しくつくるもの」を丁寧につないでいく家づくりとなりました。
以前の計画については、こちらの記事でもご紹介しています。
「78歳の方が建てる家で参考にしたいこと」https://fu-design.jp/blog/knowhow/p1064/

一番のテーマは「日当たり」でした
今回の家づくりで、N様が最も大切にされたのは日当たりでした。
「あと10年住む家として希望を出しました。何より日当たりを良くしたかったんです。朝の光で目を覚ましたいから、遮光カーテンは使いたくなかったんですよ。」
そう話してくださいました。
寝室は北側にありますが、窓の先には移植した梅の木があります。
区画整理によって裏の建物が取り壊されるタイミングと庭づくりが重なったこともあり、建物の隙間から朝日がゆっくりと差し込む環境が生まれました。
また、木塀には風が通るよう適度な隙間を設けています。
「風通しも良くしたかったから。」
そんな一つひとつのご希望が形となり、お庭は寝室だけでなく、お風呂や洗面室からも緑を感じられる場所になりました。
思い出を新しい住まいへ
南側のLDKと和室には、以前のお住まいの記憶も受け継いでいます。
「40年間暮らした家は日当たりこそ良くなかったけれど、主人と一緒につくった家だったので、何か残したかったんです。」
その想いを受けてご提案したのが、以前のお住まいで使われていた千本格子の建具を、新しい住まいの欄間として再利用することでした。
漆喰や無垢材で仕上げた新しい空間にも自然になじみ、昔の住まいの記憶が、今の暮らしへと受け継がれています。

暮らして初めて分かる心地よさ
今年の夏は厳しい暑さが続きました。
その中で印象に残ったのが、ガレージについてのお話です。
「朝、車で出かけることがあるでしょう。それでも車の中が暑くなりすぎないんですよ。やっぱり屋根があるっていいですね。」
このガレージは、雨の日や将来の車椅子利用も見据えて建物と一体で計画したものです。
暮らし始めてから、こうした日常の快適さを実感していただけたことは、設計者として何より嬉しい言葉でした。

家づくりそのものが楽しい思い出に
最後に、N様がこんなことを話してくださいました。
「素材を決めたり、一緒に見に行ったり、高田さんと打ち合わせをする時間が本当に楽しかったです。友人たちにも図面を見てもらって、いろいろ意見をもらいました。」
家づくりは、完成した家だけではなく、その過程も大切な思い出になります。
そう感じていただけたことが、私にとって何より嬉しいことでした。
次回は、この住まいをどのような考え方で計画したのか、設計者として全体計画のポイントや工夫についてご紹介したいと思います。